大判例

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長野地方裁判所 平成4年(行ウ)2号 判決

原告

有限会社信州工業

右代表者代表取締役

熊谷共一

右訴訟代理人弁護士

大塩量明

被告

長野県知事 吉村午良

右訴訟代理人弁護士

宮澤建治

田下佳代

右指定代理人

岩下行雄

鷹野治

宮坂正巳

石澤誠

中條忠明

秦嘉雄

宮尾徹

降旗一彦

事実及び理由

第三 争点に対する判断

一  争点1の(一)(主位的請求にかかる訴えの適法性)について

無名抗告訴訟が許容されるためには、行政庁に行政処分について第一次判断権を行使させる必要がないか、その必要性が極めて少ないことや、その処分がされ又はされないことによって被る損害が重大であって、事前救済の差し迫った必要性があることのほか、他に救済手段がないことが必要である。ところが、本件においては、仮に原告の主張のとおり届出の受付がされさえすれば新法附則五条が適用されると解しうるとすれば、原告と行政主体である国(地方自治法一四八条二項、別表第三の一の(二十の二))との間で、自由に当該施設の設置をなしうるという具体的な法律関係が生じることになる。そうすると、原告は、行政庁ではなく、行政主体である国を被告として公法上の法律関係に関する訴訟(行政事件訴訟法四条後段のいわゆる実質的当事者訴訟)を適法に提起する余地があることになる。したがって、本件の場合、他に救済手段がないとはいえないから、主位的請求にかかる訴えは不適法である。

二  争点2の(一)(予備的請求にかかる訴えの適法性)について

1  不作為の違法確認の訴えは、法令に基づく申請に対して行政庁が行政処分を不当に怠っている場合、処分性を要件とする処分の取消しの訴え等を提起できず、国民の権利救済が図れなくなることから、そのような事態を解消するために処分の取消しの訴え等の補充的性格の訴えとして認められた訴訟類型である。したがって、不作為の違法確認の訴えの口頭弁論終結時を基準として、申請に対する拒否処分についての取消しの訴えが提起されたと仮定して、取消しの訴えの利益が既に消滅していると解しうる場合には、不作為の違法確認の訴えの利益も消滅するものと解すべきである。

2  ところで、一般に申請に対する拒否処分の取消しの訴えの利益は、申請に対する許可、特許、認可等の処分によって生ずべき法律上の地位の取得それ自体にではなく、このような地位取得の可能性の回復という点に存するのであるが、しかし、この両者の間には緊密な関係があり、拒否処分の取消しの結果行政庁が当初の申請に対し改めて許否の決定をすることができず、ひいてはこれによる法律上の地位の取得自体が不可能となるに至ったと認められるような事由が生じた場合には、許可等の処分を受ける可能性の回復を目的とする拒否処分の取消しを求める訴えの利益もまた失われるに至ったものといわなければならない(最高裁昭和五一年(行ツ)第二四号・昭和五七年四月八日第一小法廷判決・民集三六巻五号五九四頁)。

そして、右「法律上の地位の取得が不可能」となった原因には、法令の改廃により当該申請に対する行政庁の応答義務がなくなった場合も含まれるものと解されるところ、本件においては、新法の施行により産業廃棄物処理施設の設置が届出制から許可制に変更しているのであるから、被告としては、もはや、本件届出を受理する余地はなくなったものというべく、遡って、本件不作為の違法確認の訴えの利益も消滅したものといわざるをえない。

なお、右のような解釈をとった場合、法律不遡及の原則との関係が問題となるところであるが、法律不遡及の原則は、過去の完結した事実について法律を遡及して適用することを禁ずる原則であるところ、本件では、完結した事実について新法を適用する場面ではないから、右原則違反の問題は生じない。

3  また、新法附則五条に関する原告の解釈は、独自の見解であり、採用することができない。

したがって原告の予備的請求にかかる訴えは、新法が施行された平成四年七月四日以降、訴えの利益が消滅し、不適法になったと解すべきである。

第四 結論

以上によれば、原告の本件名訴えはいずれも不適法であるから、これを却下することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 前島勝三 裁判官 菊地健治 和久田斉)

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